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胃内視鏡検査(胃カメラ)で見つかる病気を詳しく解説

「胃カメラをする予定だけど、どんな病気が分かるの?」「胃カメラの画像は何を見ているの?」胃カメラをする際にこういったお悩みでお困りではないでしょうか。
ここでは、胃カメラでわかる病気と、胃カメラで行う生検でわかること、胃カメラの画像の説明について徹底解説していきます。最後まで読んで胃カメラでわかる病気を知ると、胃カメラをやった方が良いことがわかるでしょう。

 

胃内視鏡検査(胃カメラ)でわかる病気|検査できるのは胃だけじゃない

 

胃カメラでわかる胃の病気

胃カメラでわかる代表的な胃の疾患を紹介します。
 
  • 胃炎(急性胃炎、慢性胃炎)
  • 胃潰瘍
  • 胃ポリープ
  • ヘリコバクター・ピロリ菌感染
  • アニサキス
  • 胃がん
 
胃炎
胃炎とは胃粘膜の損傷で、感染やアルコール、自己免疫疾患など様々な理由で引き起こされます。食べ過ぎて胃液が胃自体を攻撃しても胃炎になるでしょう。胃痛や嘔気の症状が多いです。胃酸分泌抑制剤が処方されて胃の保護をおこなう治療をおこないます。
 

急性胃炎は主に前庭部〜胃体(胃の下〜中あたり)に存在している細胞が乱れていることが特徴です。慢性胃炎は前庭部~胃体に存在している細胞の活動がなくなり、胃酸の分泌が少なくなるために粘膜の萎縮があります。

 
胃潰瘍
ヘリコバクターピロリ菌の感染や、痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)の服用によって引き起こされます。菌の感染や薬の服用は胃の粘膜の正常な防御・収縮を妨げるため、胃酸に対する粘膜の感受性を高める作用のせいです。高齢者の場合無症状で経過しますが、心窩部の痛み(灼熱感、差し込み痛)、空腹感の症状が出現する人も多いです。胃酸分泌抑制剤を処方したり、ヘリコバクターピロリ菌の除去を行ったりします。
 
 
胃ポリープ
胃ポリープとは一部の粘膜が内側に盛り上がった病変です。悪性でないものをさします。胃ポリープは2種類に分けられます。
 

​種類

​過形成ポリープ

​胃底腺ポリープ
​できる場所

​胃のどこでも

​胃体部

(胃の真ん中あたり)

​ヘリコバクター・ピロリ感染 ​あり なし
頻度 低い

高い

癌化の可能性

あり

(年に1回程度観察が必要)

極めて低い
治療

​・ヘリコバクターピロリ菌の除去
・切除術 (2㎝以上の場合)

​・原則治療は不要 ※プロトポンプ阻害薬の使用(胃酸分泌を抑える)にて増悪の危険性あり

 

ヘリコバクター・ピロリ菌
ヘリコバクター・ピロリ菌は胃の酸性環境でも増殖可能な細菌です。慢性感染を引き起こしやすい細菌で、小児期に感染が多いとされています。感染経路は経口、糞便への接触です。感染すると胃がんの発生率が3~5割上昇します。
前庭部(胃の下部)感染で起こる症状は胃酸分泌過多で、病気としては幽門(十二指腸との境目)の潰瘍です。
胃体(胃の中部)感染で起こる症状は胃粘膜収縮と胃酸分泌減少で、胃潰瘍や胃腺癌の原因となります。
 
 
アニサキス
アニサキスは寄生虫の一種で、幼虫はサバやアジなどの魚介類に寄生しています。魚が生きているうちは内臓に存在し、魚が死ぬと身の方へ移動する習性です。長さ2~3㎝の少し太めの糸として肉眼でとらえられます。
アニサキス幼虫が寄生している魚介類を生で摂取してしまうとアニサキス幼虫が胃壁に刺入して食中毒を引き起こします。急性アニサキス症の特徴は食後数時間~十数時間でみぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐の出現です。
 

生の魚介類は目視でしっかり確認し、鮮度が低いものはしっかり加熱しましょう。買った魚はすぐに内臓を取り除いたり、冷凍(-20℃で24時間以上)も感染予防に効果的です。

 
胃がん
胃がんは胃内側の粘膜が癌化して、無秩序に増えて発生します。胃がんは早い段階でほとんど症状がなく、かなり進行しても症状がない場合もあります。代表的な症状は、胃の痛み・不快感、食欲不振、吐き気などです。胃の壁を固くしながら広がっていくスキルス胃がんは進行が速い特徴があります。
 
 
 

胃カメラでわかる食道の病気

胃カメラでわかる代表的な食道の病気を5つ紹介します。
  • 逆流性食道炎
  • バレット食道
  • 食道裂孔ヘルニア
  • 食道静脈瘤
  • 食道がん
 
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃の内容物(主に胃液)が食道に逆流して食道に炎症を起こします。逆流時間が長いと、食後の胸やみぞおちあたりの痛み、胸が焼ける、すっぱいものが上がってくる感じといった症状がでる病気です。食道と胃のつなぎ目にある下部食道括約筋という筋肉がゆるむと胃から食道へ逆流が起こります。下部食道括約筋がゆるむ原因は加齢や食べ過ぎ・早食いなどの胃内圧の上昇、肥満や洋服の締め付け、姿勢などの腹圧の上昇、高脂肪食です。服薬と生活の見直しで治療をします。6)
 
服薬
・胃酸を抑える薬(プロトポンプ阻害薬)
・胃の運動を抑える薬
・酸を中和する制酸剤
 
食事
・食べ過ぎ、早食いを防ぐ
・高脂肪、アルコールを控える
・食後2~3時間は横にならない
 
生活
・煙草を控える
・夜に症状が出る人は枕を高くする
・肥満の人は体重を減らす
・洋服で体を圧迫しない
・長時間の前かがみは避ける
 
 
バレット食道
逆流性食道炎によって胃に炎症が発生した後、治癒の過程で食道の粘膜が変化している状態です。通常食道は扁平上皮によって覆われていますが、胃から連続的に円柱上皮に置き換わりバレット食道となります。胸やけなどの症状が起こる場合もありますが、無症状も多いです。バレット食道が3㎝以上になるとがんが発生するという研究結果があり、注意しましょう。定期的な内視鏡検査をしてください。
 
 
食道裂孔ヘルニア
食道裂孔ヘルニアは、食道裂孔(胸とお腹の間にある横隔膜の穴、食道が通る部分)から、胃もでてきてしまう病気です。逆流性食道炎の発症要因の一つであると考えられ、逆流性食道炎の25~70%に合併しています。
多く見られる症状は胸やけやすっぱいものがのどに上がってくる呑酸です。
食道裂肛ヘルニアによって日常生活が送れない場合は胃を引っ張って元に戻し、食道裂孔を締める手術をおこないます。
 
 
食道静脈瘤
食道静脈瘤は肝機能の悪化に伴い、食道の静脈が拡張している状態です。症状は特にありませんが、出血する可能性があります。多くの場合は自然に出血は止まりますが、重症化するとショック状態や死に至るため、定期的な観察が必要です。肝機能の悪化に伴い死亡率が上昇するため、肝機能の検査も検討されるでしょう。
 
 
食道がん
食道がんは食道の中央部分にできたり、食道のあちこちに同時発生したりします。食道がんは進行すると食道の外側に広がり、気管や心臓の血管にも広がる危険性があり注意が必要です。初期に症状はほとんど見られないものの、がんの進行につれて食べ物がつっかえたり、咳や嗄声がでたり、胸の違和感があったりします。粘膜にとどまるがんだった場合は内視鏡で切除可能です。
 
 
 

胃カメラでわかる十二指腸の病気

胃カメラでは十二指腸(胃と小腸をつなぐ部分、膵臓へもつながっている)の病気もしらべられます。
  • 十二指腸潰瘍
  • IgA血管炎(ヘノッホ・シェーライン紫斑病)
  • 十二指腸がん
 
十二指腸潰瘍
胃潰瘍と同じようにヘリコバクターピロリ菌の感染や痛み止めなどの非ステロイド性抗炎症薬の使用によって発生します。十二指腸潰瘍の場合、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染は50〜70%と高値です。小児の50〜60%で家族歴もみられます。胃潰瘍と異なり、食事の後に症状が軽快する可能性もあります。中途覚醒による夜間の疼痛も特徴的です。穿孔(十二指腸に穴が開く)例も多く、外科的な手術が必要となる際は反跳痛(触って離したときに痛み)があります。
 
 
IgA血管炎(ヘノッホ・シェーライン紫斑病)
IgA血管炎とは紫斑性の皮疹や関節痛、腹部症状、腎症状を主症状とするIgA抗体関連の血管炎です。腹部症状については約50%以上に合併し、腹痛・下痢、嘔吐の症状があります。一過性で軽い腹部症状が多いです。まれに十二指腸多発潰瘍・大量出血を引き起こすため、手術が必要となる可能性があります。
 
 
十二指腸がん
十二指腸がんは様々ながんが発生しますが、多くは腺癌です。十二指腸腺腫の診断を受ける可能性もあるでしょう。初期は無症状です。貧血や腹痛、腸閉塞などの症状が出ると進行している状態で発見されます。非常に稀な疾患で、診断のために外科的治療を用いる場合もあるでしょう。ごく初期の場合は内視鏡で切除可能です。
 
 
 

胃カメラでわかる喉の病気

胃カメラでは見逃されがちですが、喉(のど、咽頭部)の病気も調べられます。
  • 咽頭腺腫
  • 咽頭がん
 
咽頭腺腫
咽頭腺腫は咽頭にできた良性腫瘍です。喉の違和感や嗄声、嚥下困難が症状として発生します。できた部位によっては内視鏡での処置が困難であり、手術が必要です。急速に悪化する耳痛などは悪性腫瘍の可能性もあります。13)
 
 
咽頭がん

咽頭にできるがんで、できた部位により分類がされています。

  上咽頭がん ​中咽頭がん ​下咽頭がん
​症状 ・耳閉感
・鼻閉
進行すると
・脳神経症状
(複視、視力低下、顔面感覚障害)
​・咽頭違和感
・咽頭痛
・血痰
・嗄声(声がかれる)
・咽頭の違和感
・咽頭痛
・血痰
進行すると
・嚥下障害
・呼吸困難
治療法 ・放射線治療の反応が良い
・化学療法
・切除術(早期)
・化学療法(ヒトパピローマウイルス感染がある場合)
​・切除術(早期)
・摘出術(進行期)
・化学療法
・放射線療法

発症リスクは飲酒や喫煙で高く、飲酒では特に顔が赤くなりやすい人が継続的に飲酒を続けると発がんする可能性が高いです。EBウイルスやヒトパピローマウイルスの感染の関与も示されています。

 

胃カメラの生検は何を調べているのか

胃カメラをするさいに「生検しますねと」言われる可能性があります。不安な気持ちになるかもしれません。なぜ生検をするのか、簡単に説明をしていきます。
 
 

胃カメラの生検|病理検査でわかる病気

胃カメラの生検は腫瘍やポリープの良性・悪性の判断や、炎症や潰瘍にいる菌の判定、細胞の種類を確認するに必要な組織の検査です。胃カメラでとってきた細胞を顕微鏡で見るなどの検査をして形を確認して、がんの診断をおこないます。

 

生検を「念のため」おこなうとは

胃カメラで見つけた腫瘍に対して、見た目やできた部位から明らかに良性と思われるものでも、念のため生検を行う可能性があります。生検をされたからといって悪性だと確定するわけではないので安心してください。ポリープや腫瘍があるからといって必ず生検するわけでもありません。
 
 

胃カメラの生検で悪性の確率は?

胃カメラで生検をしたので悪性の確率が高いということはなく、病院の診断数や患者層によっても確率は変わってきます。家族歴や生活習慣による影響が大きいでしょう。胃カメラの生検を受けると正診率はあがります。14)胃カメラの生検は「がんではない」安心を得たりするためにもあると考えると良いでしょう。
 
 

胃カメラで胃がんはすぐわかるの?|胃カメラの画像でわかること

胃カメラの画像が直接診断につながる可能性もあります。胃カメラの最中や、説明の際に言われた言葉が表している内容について理解していきましょう。
 
 

胃にびらんがあるとは?

「びらん」とは潰瘍よりも浅い粘膜の組織が炎症を起こしている状態です。胃酸の分泌過多や防御機能の低下によっておこります。胃の表面があれてるイメージで、赤黒い出血跡が確認される可能性もあるでしょう。軽度なものは症状もないですが、胃潰瘍などに進行するケースもあります。
 
 

胃カメラでみえた白い部分はがん?

胃カメラで白く見えるにはいくつか理由があります。
食道で白っぽいびらんが見られると、逆流性食道炎で荒れている状態です。
ヘリコバクターピロリ菌の感染では胃に白い粘膜のような付着部や、白い縁取りで赤い粒状の構造がみられることがあります。
胃がんのなかでも未分化とよばれる癌は、胃カメラで白っぽく写ることがあります。普通の潰瘍と比べていびつな形が特徴です。癌か見分けるには経験年数が必要になります。生検をすると確実な診断が可能です。
 
 

胃カメラの画像で赤い斑点が見えた場合

胃の中に赤い斑点が見えている場合は胃が炎症を起こしている状態です。
ヘリコバクターピロリ菌の感染で萎縮性胃炎が発症すると胃の粘膜全体が赤い斑点でおおわれます。
胃の毛細血管が限局して拡張している場合も胃が赤くみえるでしょう。症状がなければ治療は不要です。
 
 

胃カメラの画像で黒い点が見えた場合

胃カメラの画像での黒い点は出血痕が多いと考えられます。胃酸で酸化された血液が付着しても黒く写る可能性があります。また、染色液を使用した場合、全体的に青黒っぽい点としてみえるかもしれません。
 
 

胃の表面がでこぼこ、しわしわに見えた場合

萎縮性胃炎の場合、胃が強く収縮して胃の内部にあるひだが強くでこぼこに見える可能性があります。
ポリープが大量にできている場合も胃の表面がでこぼこに見えるでしょう。良性であれば治療の必要はないです。
胃カメラを見慣れてない方だと、正常の胃もしわしわだと感じるかもしれません。
 
 

ピロリ菌は胃カメラの画像に写るの?

ヘリコバクター・ピロリ菌が胃カメラの画像に写ることはありません。ピロリ菌がいるかどうかは組織を顕微鏡で調べたり、尿や血液の交代を調べることでわかります。ピロリ菌感染が疑われる胃内部はつやがなくなり、全体的に赤っぽい感じになります。粘液も白っぽく見えるでしょう。
 
 
 

定期的な胃カメラで病気の早期発見や予防につなげよう

胃カメラではさまざまな病気がわかります。胃だけではなく食道や十二指腸、咽頭の病気も見つけられる検査です。がんは早期発見すると軽い治療で済む可能性もあります。いつもと違う状態に気がつけば、病気になる前に予防も可能です。定期的に胃カメラを受診しましょう。
 
 

 

参考サイト:

1)胃過形成性ポリープの癌化例の検討/日本消化器内視鏡学会雑誌/31 巻 2 号/1989
https://web.archive.org/web/20200318043315id_/https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee1973b/47/4/47_4_962/_pdf

2)日本消化器内視鏡学会市民のみなさま/消化器内視鏡Q&A/胃ポリープについて、過形成性ポリープと胃底腺ポリープの違いは何ですか?
3)MSDマニュアルプロフェッショナル版 / 01. 消化管疾患 / 胃炎および消化性潰瘍 / HELICOBACTER PYLORI感染症
 

4)厚生労働省政策について /分野別の政策一覧 / 健康・医療 / 食品 / 食中毒 / アニサキスによる食中毒を予防しましょう
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html

 

6)国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター/健康長寿ナビ / 逆流性食道炎ってどんな病気?
https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/06.html

7)日本消化器病学会/一般のみなさまへ/ 消化器のひろば/バックナンバー/消化器のひろば No.15
 
9)兵庫医科大学病院/胃・食道/十二指腸腫瘍
 

10)IgA血管炎による十二指腸・空腸多発潰瘍穿孔の 1 例/日臨外会誌/80( 2 )/2019
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/80/2/80_326/_pdf

11)十二指腸腫瘍の診断と内視鏡治療の最前線/第60巻5号/2018
 

12)国立がん研究センター中央病院/さまざまな希少がんの解説/小腸がん(十二指腸がん・空腸がん・回腸がん)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/rcc/about/small_intestine_cancer/index.html

13)MSDマニュアルプロフェッショナル版 / 16. 耳鼻咽喉疾患 / 喉頭疾患 / 喉頭の良性腫瘍
 

14)国立がん研究センター 東病院/診療科・共通部門/外科系/頭頸部外科/頭頸部(とうけいぶ)の病気と治療について/咽頭(いんとう)がん
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/head_neck_surgery/050/010/index.html

15)日本消化器内視鏡学会/市民のみなさま検査と治療について/3.1)上部消化管内視鏡検査(食道・胃・十二指腸内視鏡)と治療
 
16)早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン/第61巻6号/2019